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オークス株式会社(キッチンツール企画・販売)
新潟県三条市
うちにとってキッチンはコミュニケーションツール
AUX KITCHENを作ったきっかけを教えてください
会社、商品のブランディングに積極的に取り組んでいます。商品でいうと「ウチクック」というシリーズはおうちのキッチンに置いていても、おしゃれで絵になるキッチン用品です。「レイエ」というシリーズだとステンレス性のスタイリッシュなキッチン用品です。デザイン性の高いものづくりをしているのに、じゃあ現場はどうなの?という思いがありました。また、マスコミからの取材も多い中で「どのような会議シーンからアイディアが生まれているのですか?」と質問されると、正直以前の空間では自信を持って答えられなかったです(苦笑)。プロダクトとブランディングで、現実空間との間にあまりにも差が生じていました。それが改修に踏み切った一番の理由です。
私は東京支店にいた時期があってオフィスの打ち合わせスペースの横に小さなキッチンがありました。マスコミ担当だったこともあり、そこにメディアの人を呼んで商品の使い方を見てもらって、実際に触ってもらって、ということをやっていました。あとはモニターを呼んだり、インスタグラマーを呼んでインスタで発信してもらったりとか。それがすごく盛り上がるんですよ!キッチンツールを売る私たちにとって、キッチンという場所はコミュニケーションツールだ、と強く実感していて新潟の本社でも同じようにできないかな?と思っていました。
他にはどんな要望がありましたか?
マスコミ取材もあるので、堂々と見せられるキッチンが欲しかったということ。あとは、社内でカメラマンを育成しているのですが、撮影の腕が上がってきていたので、ブツ撮りだけではなく商品を使って料理をしたり、食事を楽しむシーンを撮りたくて。ただ、以前の空間で撮影しても良い雰囲気の写真が取れないと感じていました。良い写真が取れないと発信もできないので。なので、撮影スタジオにもなるような空間が欲しかったです。
完成するまでの不安はありましたか?率直なご意見を聞かせてください。
元から柿澤さんは知っている仲ということもあり、物理的な距離に不安はなかったです。打ち合わせはスカイプで頻繁にやりとりできていましたし。ただ、一点心配だったのは施工してくれる会社との関係性ですね。打ち合わせをはじめた当初はまだ施工会社が決まっていなかったので。古材を使いたいとか、細かい私たちの要望がきちんと伝わるかな?という不安はありました。
AUX KITCHENを作る前と後で、社内に変化はありましたか?。
元々は社員食堂だったので、もちろん今でもここで食事もとりますが、社内ミーティングに使う頻度が増えました。以前は打ち合わせ部屋があったのでそこで打ち合わせをしていましたが、ここだとキッチンもあるし商品開発も検証しながらできるので、開発スピードが効率よく上がっていると感じます。あとは、私もそうですが、集中したい時やちょっと気分を変えたい時に、一階の自分の席からノートパソコンを持ってきてここで仕事をしています。他にもそうしているスタッフがいますね。
研修、社内イベントの場としても以前から使ってはいましたが、スタッフが友人を呼んで燻製パーティーをしたり、新入社員が研修を兼ねて社内向けにパーティーを企画してくれてとても盛り上がりました。以前は研修だから強制的にやらされている感が否めなかったのですが、空間がカッコよくなったので、ここを使って楽しんでやろう!という空気が自然に社内に広がっていると思います。
その他予想外の効果はありましたか?
柿澤:インスタを拝見させてもらっていますが、ほとんどがこのキッチンで撮影されていますよね?
近藤:そうなんですよ。本当に映え空間ですよ!照明の感じがとてもいいです。光の入り具合も。どこで撮影しても様になります。撮影の機会がすごく増えて、SNSやクラウドファンディングなど想像以上に発信力が強まりました。SNSに載せている料理の写真は全てスタッフが作っていて、テーブルコーディネートも自分たちでやっていますよ。
あとはクラウドファンディングで注目してもらってメディアでも多数取り上げて頂いた「大人の鉄板」のプロモーションとして、調理風景をここで撮影したり、モニター会をして一般のお客様にも足を運んでもらいました。AUX KITICHENができてから発信する回数がとにかく増えて、その分反応が戻ってくることを実感できているので、手応えを感じています。
今後、AUX KITCHENをどう使っていきたいですか?
もっと一般のお客様にここに来てもらって、実際に商品を使って、食べてもらえるコミュニケーションの場にしていきたいです。新潟のものづくりの会社は自社で製造していますが、私たちは地元の会社に製造を依頼しているので製造ラインを持っていません。なので、会社としては「うちの商品を使った体験をしてもらう」というのを非常に重要視していますね。商品そのものを伝えるのではなく、これを使ったらこうなるよ、こんな生活ができるよ、というのを伝えていきたいです。工場の祭典に参加して、一般の方にどんどん来てもらいたいですね。
編集後記
リノベーションを考える時には、当然予算も一緒に考えなければいけません。オークスさんはキッチンツールを企画、販売している会社です。自社の得意なこと(=メイン事業)にフォーカスして食に関わる食堂のリノベーションに的を絞ったことで予算を抑えることができました。近藤さんとお話ししてみて、やりたいことだけで考えるのではなく、会社のことをよく理解できていれば、今やるべきことの優先順位がつけやすいと感じました。会社1階から2階にあるオークスキッチンに来る方は、皆空間のギャップに驚かれるそうです。既存の空間と、新しい空間の差はストーリーがあれば売りに変えられます。
また、キッチンとして使うだけでなく、スタッフの食堂、商品の撮影スタジオ、商談、社内外のイベント会場、オフィス等多目的に活用されており、空間容積と費用の費用対効果は大きいです。インタビュー中に出てきた「空間がカッコよくなったので、ここを使って楽しんでやろう!」という意識が社内に広がったのも嬉しいことです。「空間を使い倒す」まさにこんな表現がぴったりです。事業に直結する商品開発のスピードや質が上がったことも大きな効果です。
間取りや設備を考える前に、企業の持ち味を引き出しデザインすることがこれからのオフィスリノベーションには必要だと感じるインタビューでした。
(インタビューアー:柿澤 志保)
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